平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

おっさんミーティング 第二弾


◆甍を打つ雨粒を観ながら、福田平八郎の「雨」という絵を思い浮かべた。雨粒そのものを一切描かず、瓦屋根に染み込んだその濃淡で、時間経過を感じさせる。実物を見せないで「宇」(空間)と「宙」(時間)描き切る。実態を伏せることにより想起させる。日本絵画のもっとも得意とする手法である。

GYO


◆おっさん二人が若者の集まるカフェで、打合せをかねて懲りもせずに雑談(ぞうだん)。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/431.html(前回 二人の間だけで好評につき第二弾)
「浮いてるよね〜 この店の中で」 「まだだいじょうぶ。浮いていることが分からなくなたときがいちばん危ない(笑)」 「なんだかつい先日も二人でこうして会ったような気がするね」 「いちばん会ってるかもね」 「なんかやだな、その言い方」 「『男が二人』(笑)」 「ローリー・ムーアの傑作!」 「そういえばこの通りの、ほら、あの店の行列がいつの間になくなっちゃったね」 「行列もファッションだから。苦労して手に入れるという物語をいっしょに購入する。それが今の消費文化でしょう」 「文化なんて簡単に言うもんじゃないよ」 「行列っていえば河鍋暁斎の百鬼夜行図屏風、あれ今の展覧会で観られるのかなあ」 「京都の?どうなんだろうね、あれ、実物を一度は観たい」 「行列といえばいちばん好きなのが16世紀の終わりにアンニバレ・カラッチが描いた『バッカスとアリアドネの行列』、あれは圧巻だよ」 「確かフレスコ画でしょ。バロックの草創期の作品で大勢の人々に影響を与えた」 「日本ではなぜダ・ヴィンチばかりしか語られないのかね」 「というか、日本画も語られない(笑)」 「『バッカスとアリアドネの行列』、あれは勝利の凱旋がテーマでしょう」 「そうそう、イタリア語のトリオンフィ」 「けっきょくこの辺りの絵画は当時のことだから詩を出発点としているでしょう」 「ペトラルカの長編詩が源流でしょう」 「確かにそうだけれど、もっと正確に言えばペトラルカがモデルにしたのが『プシコマキア』」 「型があるから型破り(笑)」 「プシコマキアってキリスト教でいうところの人間倫理の擬人化形式の?」 「そうそう、たとえば色情が貞操と闘って破れるっていう、例の表現手法ね」 「ところでお腹空いたね」 「ダイエットはじめたし」 「また??」 「そういえば柔道も世代交代だね」 「あくまで一本勝ちにこだわった井上が好きだね、わたしは」 「勝たなきゃ、意味はないでしょう」 「勝ち方でしょう」 「それは格闘技をやったことのない人の理想論」 「そんなもんかな〜」 「土佐派が狩野派に取って代わられたように必ず世代は交代する、それは仕方のないことでしょう」 「あ、地震??」 「寝不足でしょう」 「寝てないし」 「サイトの書き込み、減らしたら(笑)」 「・・・苦笑」 「GW、どこにも行かなかったし」 「オタマジャクシの水替えしないと」 「今朝何食べたか思い出せない」 「眼底が痛い」 「腱鞘炎が痛い」 「胃が荒れちゃって」 「腰が痛い」 「病気自慢かい(苦笑)」 「中国と台湾ってどうなったの?」  「そういえば五輪のコースも変えたんだよね〜」 「最近、声とか音に興味があってね」 「わ、同じ同じ、今度は音と声をテーマに話ししない?」 「おっさん二人で?苦笑」 「おっさん二人がいいんだよ」 「肉体の音なんてテーマでどう?(笑)」 「相変わらず変だよ、少なくもとこのカフェには不似合い(笑)」 「それにしてもさっきから おっさん二人がニヤニヤしていて気持ち悪いだろうね〜」 「おさん?」 「違う違う、それは山本周五郎でしょ〜 『おさん』でしょう〜(笑)」 「あれ、読むまでずっと『お産』だとおもってた(笑)」 「相も変わらずおっさんだね〜(笑)」 「おっさんにおっさんっていわれたくないな」 「最近の中年って、自分がつまらないことしかない言えないのに変に若者ぶって、おっさんの駄洒落に対してしらけた顔するでしょう」 「つまんない、とか平気でいうあの態度(苦笑)」 「マナーもなってないし」 「あれ最低だね。じゃ、そういう人のジョークや洒落がおもろいかっていったら、教養の欠片もない(爆)瞬発力だけ(笑)」 「教養主義じゃないけど、まったく同感」 「さ、帰ろっ 帰ろっ」 「座り過ぎてロングフライト症候群」 「こんな歩道のど真ん中でラジオ体操の格好だけはやめてよ〜((涙))」

おっさん二人は目と目を見つめ合って、再会をかたく約束したのであった。
もちろん仕事の打合せそのものは正味五分で終わったのであった。
じゃんじゃん。

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